童話屋

童話屋が初めて出版した絵本です。表紙が二つあります。奥付も二つあります。
はじめから魔法が始まるようで面白いでしょう。でもこれにはワケがあります。

絵本の主題はアナモルフォーシス。
わざとひずませた絵や文字を描いておいて、それを円筒の鏡にうつすことで正しい文字や絵になる、その変化を楽しむ絵本です。

一頁に、Yという大文字とヨット(Yacht)の絵がセットになっています。小文字のyは、ヤク(yak)の絵と一つのセットです。
アルファベットには大文字と小文字があります。つまり、AからZまでの流れは大文字・小文字の二種類がありますので、片方の表紙からは大文字の流れ、反対の表紙(しかも逆さま)からは小文字の流れとして構成してあります。
どちらの流れも終点は奥付になるよう、奥付も本の真ん中でちゃんと二つにした、というわけです。

アナモルフォーシスの手法は昔からあります。絵を描くための科学的手法である遠近法の副産物で、ヨーロッパで流行したものです。
日本にも江戸時代の「さや絵」といって、刀のさやにうつしてみる技法が存在します。

つまり、ひずみ絵も、二つの表紙も二つの奥付も、とても科学的にできている絵本なんです。

この本ができたとき、安野さんは「徹子の部屋」に出演しました。安野さんが円筒の鏡をおくたびに、徹子さんは、びっくり仰天。その面白がりようが、尋常ではなかったので、あろうことか、3万冊の初版はまたたくまに売り切れ。出版の仕事は無事、船出したのでした。
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