童話屋

みなさんは『アンクルトムの小屋』を読んだことがありますか。
作者はハリエット・B・ストー。ストー夫人といわれています。

41歳のときに書き上げた『アンクルトムの小屋』は、黒人奴隷の悲惨さを世に訴え、当時1年のうちに30万冊も売れてベストセラーになりました。
南北戦争が終わって黒人は解放されましたが、彼女はその後の余生を黒人教育に捧げました。

この伝記を執筆したのは、『赤毛のアン』で有名な、翻訳家・児童文学者の村岡花子さん。
村岡氏らしい、温かな描写にあふれた伝記に仕上がっています。

「ストー夫人の「アンクル・トムズ・ケビン」が本になってあらわれてから9年めの1861年、リンカーン大統領のときに、奴隷を使っている米国南部と、これに反対の北部とのあいだに南北戦争がおこりました。小説が導火線になって戦争がおこるなどというのはめずらしいことで、その小説の作者がよほど強く感じて書いたものだということができます。
 ストー夫人にとっては、なにをするときにも正義と愛が土台になっていたのです。私がこのストー夫人の伝記の中で、みなさんに読みとっていただきたい点は、夫人がどんなえらい仕事をしたかということよりも、どういうふうにしてこのような大きな仕事をするにいたったかという、その進歩の道すじであります。(中略)
それらのことがらの底をながれているストー夫人みずからの人がらについて私は、みなさんに考えていただきたいのです。」
                              (昭和30年、著者まえがきより)


※本書は、講談社発行の「世界伝記全集」(絶版)に収録された著作の復刊です。
 挿絵は、朝倉摂さんによる描き下ろし。
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