童話屋

それまでに刊行されていたキュリー夫人伝の多くは、娘エーヴが書いた「キュリー夫人伝」のあらすじをまとめたもので、桶谷さんには不満足な内容でした。東京工業大学教授だった桶谷さんは、随筆・評論でも著名でしたが、日本の子どもたちのために、科学者の目でマリ・キュリーの伝記を書こうと考え、この伝記を完成させました。

「わたしはキュリー夫人について「天才」ということばを、一度もつかいませんでした。
 それは、こうしたことばをかるがるしくつかうことにわたしは反対ですし、日本の少年少女諸君も、頭がよいということのうえに、大きな努力と、うまく機会をつかむ能力を持つならば、キュリー夫人の高さにまでたっすることが、けっしてできないことではないと考えられるからです。」
                              (昭和29年、著者まえがきより)

桶谷さんは本書で、マリ・キュリーという一人の人間の生き方とあわせ、一科学者としての功績をとても判りやすく語っています。日本の子どもたちに、科学への夢をかきたてる最良の偉人伝です。


※本書は、講談社発行の「世界伝記全集」(絶版)に収録された著作の復刊です。
 挿絵は、朝倉摂さんによる描き下ろし。
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