童話屋

文字のない絵本ですが、絵の細部を追っていくだけで自然と物語が生まれてきます。
安野絵本の真骨頂、品格ある傑作です。

1957年のフランス映画、ルネ・クレール監督「リラの門」の一場面がモデルです。

はじめの頁には、荷車を引く老夫婦。城門には時計があって、朝の5時。
次の頁からは、蚤の市の始まりです。
ローソク売りや古い大工道具売り、旧式カメラやタイプライターを売る屋台が並びます。
野菜や果物の店も軒を連ねています。

頁をめくっていくと、蒸気機関車が丸ごと一台、古い帽子や十字架も並んでいます。
古い道路標識、古楽器や農具がずらり。
中には、入れ歯なんかを並べる店もあります(探してみてください)。
古本屋、古時計屋、古家具屋...、もう目がまわりそう。
朝やってきた老夫婦は夕刻に、代わりに買い入れたものを積んで帰っていくのです。

最後頁には、安野さんの茶目っ気たっぷりのメッセージつき。

「この本は新しいものですが、きっといつのまにか古くなります。(...)
 私はこの本が、何十年もたって、もういちど見てもらえる日をまっています。
 もしかしたらこの本が蚤の市に出るかもしれませんからね。」
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